明日という選択

インフォームド・コンセント

外科医は「手術」をすることがメインの業務になります。手術というのは、ほかの科の医師にはできない業務なので、外科医にとってもっとも重要な仕事ですし、外科医である価値がそこにあるといえます。メインの業務は手術なのですが、外科医の業務時間のおよそ20%は、患者さんやご家族に対して病状や手術についての説明をする時間として使われています。この20%という割合は外科医の視点から考えると、かなり長い時聞をかけて、病状や手術の説明をしているという感覚です。しかし、この説明の時間というものはひとりひとりの患者さんにとっては一番大切であり欠かせない時間です。医者からしたら長い時間を割いたと感じていても、患者さん側から考えると、短い時間で説明されたと感じる人もいるかもしれませんし、説明時間が短くて全然理解できなかったと感じる人もいるかもしれません。医者としてもこれだけ長い時間を割いても「全然伝わらなかったなあ」という感覚になることがたまにあります。若い頃は「なんでこんな簡単で単純なことが伝わらないのだろうか」などと、悩んだり、伝わらないことを自分ではなく患者さんが悪いと思ってしまっていました。今思うと、とても傲慢だったと反省しています。きちんと患者さんに伝わるように説明しなければ、この時間はなんの意味もなくなってしまいます。現在、「医学的な話をかみくだいて、患者さんにどのように伝えるか」というテーマについて、医療界では様々な取り組みが進められています。「インフォームド・コンセント」という言葉をご存知でしょうか。これは、医者と患者さんのコミュニケーションを表す言葉の代表格と言われています。日本語訳にすると「説明と同意」という簡潔な訳になってしまうのですが、どのようなものであるのかを説明します。もともとの始まりは患者さんの権利を確保する意味で、米国での個人主義の高まりの一環でした。「個人の尊重」と「個人の自己決定権」が尊重され、 1981年に世界医師会がリスボン宣言として公表したものなのです。医者目線で「説明することと同意してもらうこと」に関してもう少しわかりやすく言いかえてみますと、医者によっては若干の違いはあるかもしれませんが、「医者は患者さんに、病状についてを詳細に説明をし、さらにその病状にとって有効であると考えられる治療行為について説明する。その上で納得してもらい、治療をすることに同意をいただいたときに限り、治療をする」と考えられています。