明日という選択

医者の経験値

がんという宣告を受けた際に、ぜひ主治医に確認しておいてほしいポイントがあります。まず、その医者は、そのがんの治療に慣れているかどうかということです。一年で何人くらい担当しているかという質問もしておいた方がよいでしょう。この質問は担当主治医が、該当のがんにどれだけ詳しいかを尋ねていることになります。医者であればなんでも詳しいのであろうと思われるかもしれませんが、実はそんなことはないのです。医者の多くは自分の専門分野というものを持っています。

医者

例えば、消化器外科の大腸という臓器が専門であるという医者もいます。そしてさらに、そのなかで大腸がんの治療を特に専門にしているというように、とても細かく専門的に担当している場合が多いです。さらに医者によってその中でもどの手術を一番得意としているかなど、その医者の手術の得意不得意などもあります。小さい傷を聞けるだけで行う手術である「腹腔鏡手術」というものや、がんが進行してしまって、ほかの臓器にも転移しているため、複数の臓器を取らなければならないほどの「拡大手術」と呼ばれる手術が得意であるという医者もいます。しかし、拡大手術となると自分の専門としていない領域である臓器も取らなければいけません。その作業については慣れていないので不得手である、といったように様々な手術のケースがあり、医者が得意不得意としている手術が必ずあります。他の臓器の手術も行わければいけない際は、できないわけではありませんがハイレベルではないため、その分野を得意としている外科医と一緒に手術を行います。最善の医療を提供するためには、専門とする医者が担当するのが一番です。

しかし、「医者であれば、どんなことでも最高レベルでやれる自分でありたい」これが医者の矜持です。わざわざ不得手な分野を自ら明かす医者は少ないかもしれません。しかし、ここ数十年で医療の細分化はとても進歩してきました。ですから、医者一人の知識や技術の中には必ずムラがあるはずなのです。①まんべんなく広い領域の知識と技術はあるが、突出してすごく得意というものはない医者、②ある領域だけに特化しておりとても深い知識と技術があるがほかの領域に関してはあまりわからない医者という感じに多くは、この2パターンにわかれるでしょう。そして、外科医に関しては日本の多くの外科医が①のタイプであると考えられます。「今日は大腸がん手術を自分で執刀して、明日は乳がん手術と肺がん手術に助手としてお手伝いする。あさっては肝臓を切った後に痔の手術をしてから、鼠径ヘルニアの手術をする」というような働き方をしている医者が多いと考えられます。